お湯の水割り

思ったときに思っただけ書く場所です

【ミッドサマー】を観たぞ

今月のアマゾンプライムに追加されると聞いて楽しみにしてたんだがようやく見ることができました。

 

www.phantom-film.com

 

公式HP、まだ「絶賛公開中」なんだけどまだ絶賛公開中なんだろうか。

こういうのっていつまで編集してるんだろうな。

 

 

感想

なんとなく聞いていたのはクレイジーな映画だってことだったんだが、その粋やいかにという気持ちで視聴。

 

メンタルに問題を抱えているダニーは、妹の無理心中によってさらに追い詰められている。

そんなダニーの交際相手であるクリスチャンも、重荷に感じつつなかなか別れを切り出せずにいる。

そんなさなか、クリスチャンの友人ペレが、故郷ホルガの夏至祭に友人一行を招きたいという。

誘われたのはクリスチャンだけだったものの、話の流れでダニーも誘うことになる。

小さなコミューンの中で行われている常識とは乖離した風習、文化に一行は翻弄され、

ダニー、クリスチャンは大きなうねりに飲み込まれていく。

 

比較的わかりやすい、異文化圏の常識に追い込まれて飲み込まれて変わっていく物語だった。

全体をざっくり見てしまえばその通りなんだけど、一人一人の「普通の感覚」を観ていけば、

こういっちゃなんだけど「そうもなるわな」という感じの展開。

分かりやすくクレイジーだったりするわけではなくて、やさしく緩やかに狂わされていく感じ。

そういうあたりが見やすくて味わい深い映画だなあと感じた。

 

ダニーの「そうもなるわな」

ダニーはもともとトラウマを抱えていたり、パニックになりやすい人物像で、

序盤でクリスチャンに頼ってしまうことを嘆いたりするものの本質的には

支えてもらわないとどうしようもない人なんだろうと思う。

つまり共感され同調されないと落ち着けない人で、

ホルガの人たちは仲間(家族)の感情に対して同じくして嗚咽をあげたりするふるまいを見せるので、

そういうとこもなおさらダニーには刺さるんだろうなあと思って観ていたな。

メイポールダンスの前はちょっと不安そうだったのに、

一緒に踊ってるうちに楽しくなっちゃって、いつの間にか女王になっちゃうのもさもありなんというか。

でも小さなコミューンの中でだとそういうふうになっちゃうのもさもありなん。

 

クリスチャンの「そうもなるわな」

クリスチャンはだいぶ普通の人間で、

ダニーを重荷に感じていたり、でも気にしてあげたり、

文化研究の傍らでジョシュと同じモチベーションを持っていたり、

そのくせ喧嘩したりとめちゃくちゃ普通だった。

あの環境下で普通なのもずいぶん図太いように見えるが。

とにかく、普通な分、あっという間にホルガのうねりに飲み込まれて、

受胎の儀式に取り込まれてしまって、

正気に戻れば逃げ出して、結局捕まってしまう。

なのでこの作品にとっての貴重な常識人枠なのかもしれない。

何がくるってるのか?というのは別の話で。

しかしクリスチャンずいぶんとかわいそうだな……

 

マークの「そうもなるわな」

こいつはもう仕方ないと思う……

というかマークみたいなキャラクターはこの手の異種文化物には必ず存在する枠なので、

そういう意味でこいつは嫌いじゃないんだが、まあ仕方ないわな。

きれいな女の子との兼ね合いがクリスチャンみたいに何かあるのかもとも思ったが、

それはクリスチャンが担当していたみたいなので、あっけなく散華してしまった。

 

ジョシュの「そうもなるわな」

ジョシュは民俗学の研究をしているんだったかな?

それ故に調べたくなってしまうことがあるのはとてもよくわかる。

文化はタブーが多いので聞きにくい側面はあるだろうけど、

実際普段知らない世界に出くわしたらいろいろ気になるし聞いちゃうよな。

論文にしたいと言っていろいろ聞き出そうとする姿勢は好きなんだけど、

物語の都合上というか、

これもまたこの手の異種文化物には必ず居るタイプで、

やめとけって言われた聖書の盗撮をしてしまったのが運の付きだな。

映画ってこういう「絶対にやってはならないことを直接アタックして断られた後をあとでこっそりやろうとしてひどい目に合う奴」ってのがいるよな。

そういうものなのかな……。

 

 

展開自体はとてもシンプルでわかりやすかったな。

友人の誘いでホルガ村へ、その先で同じく誘われた外の人がいて、

穏やかな夏至祭かと思えば常軌を逸した儀式があり、

それに混乱する外の人、興味を持つ人、関わり合う人、それぞれの最期。

一方的に巻き込まれているはずなんだけど、なんか相互的な結末に見えるから不思議だな。

 

描写という意味で言えばとにかく夏至のシーズンなのでずっと明るい。

ずっと明るいって精神おかしくなるよね。

出来事は不可解で認知は歪んでいたりするのに、

明るい景色とあふれる草花、白い出で立ちに楽しそうな雰囲気で、

緩やかにやさしく狂わされている感じがずっとあったのがよかったなと思っている。

観ていて穏やかになじむ。

 

個人的にインパクトのあったシーンというか絵面は、

「クリスチャンが連れ込まれた受胎の儀式の部屋のシーン」。

初めてクリスチャンが扉を開けた瞬間の、

薄青の部屋、薄暗い灯り、花のベッドに横たわる女性、その周りで歌う女性。

あのシーンを観た時に宗教的な美しさを感じた。

ああいう宗教画があっても全然納得できる気がする。

 

なんにせよ特段過不足もなくすっきりまとまっていて見やすいストーリーだったな。

飛び降りる人とかその死体とか叩き潰された死体とか切り開かれた死体とか

そういうのが見れない人じゃなければ楽しめると思う。

なんか狂ったやつが一生「狂い」を押し付けてくる映画じゃないし、

不快な出来事が押し寄せてくるだけな映画でもないし、

なんか不気味さと異質さのある雰囲気を楽しみたいならおすすめできるなあと思う。